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2011年12月26日月曜日

たまには、社説を!「国の未来は自分たちで決める」

年の瀬になって、週のはじめに、ふと立ち寄った東京新聞の社説、最近ではほとんど読まなくなった新聞社の社説ですが原発事故では辛うじて評判の悪くない東京新聞。「国の未来は自分たちで決める」この言葉の意味を噛み締めて新年を迎えたい。
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【社説】

週のはじめに考える 遠くて近きものは

2011年12月26日

 
 過去は現在を照射して未来への展望を開いてくれます。閉塞(へいそく)感に覆われ、政治が非力な時代だからこそ熱狂を警戒し冷静であることが求められます。
 真珠湾攻撃から七十年、映画の完成もあって山本五十六が脚光を浴びています。対米戦争に誰よりも反対しながら、開戦の指揮を執ることになった提督です。
 経済停滞、政治の機能不全に不安、不満が募る状況に当時と似たところがあるからでしょう。
 陸軍若手将校がクーデター未遂の二・二六事件を起こした一九三六年から開戦の四一年までの五年間で、内閣総理大臣が六人誕生するほど政治は不安定でした。
◆民主的に握った独裁権
 政治のブレーキが利かず、軍部は既成事実を積み重ねて暴走し、まるで軍部独裁でした。
 それから七十年余、「独裁も必要」と言う橋下徹氏の率いる「大阪維新の会」が大阪府議選、府知事選、市長選で圧勝しました。橋下氏は「民意を無視する職員は去ってもらう」と自分になびかない職員を威嚇し、「維新の会」は政治的に中立であるべき教育委員を政治に追従させる教育基本条例を制定しようとしています。
 枕草子には「遠くて近きものは極楽、舟の道、人の仲」とあります。「十万億土の彼方(かなた)にある極楽も、ひたすら仏を念ずればたちまち到達する」「遠いと思っても舟旅ならすぐ着く」「男女はいつの間にか結ばれる」と言うのです。
 清少納言が生きていたらこれに「民主主義と独裁」を加えるかもしれません。
 日本の同盟国だったドイツのナチスはクーデターで権力を奪ったのではありません。極めて民主的と評されていたワイマール憲法の下で選挙に勝ち、全権委任法を議会で制定して総統ヒトラーが独裁者になったのです。独裁を許したのは国民でした。
◆言葉が躍るだけの政治
 野田佳彦首相は、小泉純一郎氏が退陣した後の五年間でやはり六人目の総理大臣です。政権が変わっても民主党のマニフェストは多くが空手形です。政治家の言葉が躍るばかりで成果はいっこうに見えてきません。
 破産に近い国家財政、破綻寸前の社会福祉制度、難航する地震、津波被害からの復興、終息の見えない原発事故…重なる危機を前に責任者が適切なリーダーシップを発揮できず混乱しています。
 その一方で「風評被害」だとか「絆」などといった責任を曖昧にする言葉が飛び交い、異論を唱えにくい空気もあります。
 政治不信が高じると強力な指導者待望論に結びつき、独裁を歓迎する雰囲気が生まれかねません。
 閉塞感に覆われた時代に民衆の不満を束ねるには、敵をつくって目をそちらに向けさせ、二者択一の決定を迫るのが手っ取り早い手法です。分かりやすく激しい言葉で熱狂させ、「人気」を「支持」に変質させます。
 橋下流はその典型といえます。その人気に押され、異なる考えの主は萎縮し沈黙します。地方自治にしろ国政にしろ、そうなると真の民主主義は機能しません。
 かつての日本軍部の暴走もナチスの暴虐も民衆の熱狂が後押ししました。「改革派か守旧派か」と問題を単純化して異論を蹴散らした小泉元首相も、有権者は圧倒的に支持しました。
 小泉改革の熱が冷めた後に見えてきたのは荒涼たる社会です。社会福祉は揺らぎ、貧富の格差が広がり、貧困層が増大し、若者が夢を抱けなくなっています。
 清少納言は「近うて遠きもの」に「宮のべの祭り、思わぬ同胞、親族の仲」をあげました。後の世に「民主主義と国民の幸せ」と加えられないよう、歴史の教訓を生かさねばなりません。
 多様性、少数意見の尊重は民主主義の大原則であり、責任ある立場の人の適切な指導力発揮と、時間をかけた丁寧な議論により相対的に適正な結論が生まれます。自らと正反対の意見でも真摯(しんし)に聞いて、自分の主張を疑ってみる寛容が社会を成熟させます。
 国民一人一人が、冷静な目で全体を客観的に見渡し、人気を能力や識見と見誤らずに熱狂から距離を置くことが大事です。
 それは報道に求められる姿勢でもあると自戒しています。近現代史はメディアが国民を熱狂に追い込んだ歴史でもあります。
◆自分たちで決める気概
 混沌(こんとん)たる不安、不満から建設的な力は生まれません。情緒や感覚に頼らない冷徹な現実認識と主体的思考が、不満や政治不信を前向きエネルギーに変えます。
 増税論議の本格化など一段と厳しくなる新しい年を前に、誰かに任せるのではなく「国の未来は自分たちで決める」という気概に富む主権者でありたいものです。

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